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December 25, 2005

1999年4月12日BBCのインタビュー

ささやかですが、クリスマス・ギフトとして載せたいと予告しました、99年のBBCインタビューの訳がとりあえず、出来ました。まず前半をUPします。逐語訳としては不完全ですし、誤解・誤認等の箇所がありましたら、責任はすべて転妻よしこにありますことを予めおことわりしておきます。聴き取りに関しましては、ナオミ様に多大なご尽力を頂きました。本当にありがとうございました。この場をお借りしまして御礼申し上げます。

1999年4月12日イギリスBBC放送Radio 3 “In Tune”より

(CD『展覧会の絵』より『チュイルリー』が流れる)
BBC:ムソルグスキーの『展覧会の絵』より、ポゴレリチ演奏の『チュイルリー』でした。イーヴォ、BBCラジオ『イン・トゥーン(In Tune)』に、ようこそ。特有の示唆に富む、かなり特異な解釈でしたね。 あれを、暗い嵐のさなかにある、小さな明るい陽気な絵として見る人がほとんどですが、あなたはどうご覧になりますか。

ポゴレリチ:絵画として、見ています。(笑)

BBC:どういう意味で。

ポゴレリチ:あらゆるディテールを持った、ひとつの、ただの絵画として。

BBC:このように有名な作品の解釈を、どのように始めるのですか。

ポゴレリチ:詳しく検証することによって、です。『展覧会の絵』に関しては、私はこれを演奏したいとは、長い間、思っていませんでした。今、聴いた『チュイルリー』のことではないのですが、別の曲で、技術的な面での解決策が必要だと思われるものがあって、それがわからなかったからです。それが、ある日、私はひとつの洞察に恵まれて、取り組み始めました。だからと言って、作品がより簡単になった訳ではありませんでしたが、自分にとってもっと説得力のある作品として弾けるようになりましたし、あの有名なオーケストラ版に見られるような豊かな表現を曲に与えることによって、絵画のイメージを実際に再生できるようになったと思っています。

BBC:これからあなたは、2週間後の夜、ロンドンのロイヤル・フェスティバルホールでリサイタルを行いますが、それは現実の絵のコレクションを守るために、収益を寄付するという演奏会ですね。

ポゴレリチ:こういう演奏会を行う、原因となるようなことが、この世でもう起こらないようになると良いのですが。チャリティのための演奏会など、いつかしなくてよくなってくれたら、と心から思っています。しかし不幸なことに、世界中で起こっていることは、相変わらず、我々がチャリティ活動をしなくてはならないような状況です。

BBC:これがどういうコレクションで、どこにあり、どうなったものか、ということを話してくれますか。

ポゴレリチ:詳しいことはわかりませんし、私は深入りしたいとは思っていません。私の役目は、ただ、そのイベントの中で演奏をすることで、この基金の役割は、集まった資金を最良のかたちで運用することです。

BBC:これはクロアチア東部のブコバルというところの、街の美術館ですね。この街はセルビア軍によって1991年にほとんど破壊されましたが、昨年、クロアチアに返還されました。クロアチアは貴方の祖国ですね?

ポゴレリチ:ええ、そうです。私の母国はクロアチアということになりますね。私はブコバルの戦渦を生き抜いた人たちに、実際に会いました。彼らに話しかけ、いろいろと聞かせて貰いました。極めて悲惨な話でした。私の望んでいることは、こうした人々が再びふるさとに戻ることができ、彼らの街を再建できるように・・・・ということです。

BBC:貴方はベオグラードの生まれですよね。

ポゴレリチ:はい。

BBC:ぶしつけな質問ですが、あなたはセルビア人ですか?

ポゴレリチ:(笑いながら)いいえ、いいえ・・・

BBC:クロアチア人ですか。

ポゴレリチ:私は、クロアチア人です。父がクロアチア人で、母はセルビア人です。私はベオグラードで生まれ、11歳までそこで暮らしました。

BBC:さきほど言っていた美術館は、ほとんど破壊されたのですが、一部のコレクションは、安全なところに保管されていたらしく焼け残っていました。演奏会はその絵のためにお金をつくるのが目的ですが、そのイベントの間に、今、ザグレブの、ホテル・エスプラナードにいる人たちを対象に、目的地はクロアチアのどこでもいいということで2名分の帰郷のためのチケットが当たる、抽選が行われます。これは我々から見ると、アイルランド紛争が最悪の状況にあるときに、ベルファーストに帰る切符を出す、しかしそこは多分、全然安全な場所ではない、というようなことではないかと思いますが、・・・・クロアチアは今、行ってみられるようなところなんですか。

ポゴレリチ:完全に逆です。私は一昨日、ザグレブで知り合いの結婚式に出席して、それで戻ってきたばかりですが、むこうは、英国航空で旅行するのに、全く安全な場所ですよ。

BBC:そうですか。さて、ロイヤル・フェスティバルホールで、2週間後の4月26日月曜日に行われるリサイタルで、我々はこれから、貴方の演奏を聴くことになりますね。ラヴェルの『夜のガスパール』の三曲から、聴いてみましょう。この中には、ピアノに関して書かれた、非常に難しい作品が含まれていますね。

ポゴレリチ:(笑)ええ、だいたいそのように考えられていますね。

BBC:しかし、「オンディーヌ」は、技術的にというより、感情表現の面で、やり甲斐があるのでは?

ポゴレリチ:技術的な面でもありますよ。

(CD『夜のガスパール』より『オンディーヌ』が流れる)

BBC:技術的にも感情表現の点でも、弾き甲斐のある、ラヴェル『夜のガスパール』より『オンディーヌ』、イーヴォ・ポゴレリチの演奏でした。さて、イーヴォ、控えめに言っても貴方は、「物議を醸す」演奏家ですよね。例えば一年前、「デイリー・テレグラフ」のブライアン・ハントは、あなたのショパン『前奏曲集』を指して、貴方の演奏はエキセントリックで気ままで腹立たしいものだと評し、更に彼は、プロコフィエフの『ロメオの別離』では、:*******(聴取不十分・意味不明瞭)だと言っていました。・・・貴方は批評を読んでいますか。

ポゴレリチ:いいえ。

BBC:批評家のそういう反応について、貴方がどう思っているかと訊ねたかったのですが、では、それがきっと貴方の答えですね、全く意に介していない、という・・・・

ポゴレリチ:資格というものが何なのか、新聞の編集部の一員になる基準とは何なのか、私にはわかりません。以前、このイギリスで、私の録音が農学の学位を持った人によって批評されていたことがありました。多分、適当な人がほかにいなかったので、その人がそういう立場になって編集をしたり、演奏会や録音についての記事を書くことになったのでしょうが。だから私は、そのようなものについては、コメントできません。

BBC:にも関わらず、あなたは1980年の初めには、わざと.******(聴取不能・極めて不明瞭)しましたよ。

ポゴレリチ:(途中で遮るように)もう一度仰って下さい。

BBC:1981年、21歳のとき、あなたはかの有名なショパン・コンクールで・・・・

ポゴレリチ:わざと、どうしたのか、の箇所をもう一度言って頂けませんか。そのような言い方に相当する、どのようなことを、私がしましたか。

BBC: まあ、つまり貴方は、普通とは違う服装を、していましたよね。

ポゴレリチ:全然していません。あれは全く唐突に報道されたことです。

BBC:.貴方は(映画の?)『Maverick』みたいだったそうですね。

ポゴレリチ:私は本選に進むことが許されませんでしたが、それは服装などとは全く関係のないことです。

(つづく)

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Comments

こんにちわ。
私のBLOGの記事を、書き終わって気が付くと、よしこさんも、なにか、書いていることが、リンクページから、読み取れました。
きちんと、クリスマスらしい内容を、掛かれてますね。さすが、評論家のカガミですね。

記事の内容とは、関係有りませんが、イギリスBBC放送Radio 3(少しは、あるか?)のクラッシクのサイトでは、NAXOSや、ニューヨークフィルのように、WEBラジオとして、音楽を聴くことが出来ます。

BBC - Radio 3 - Classical
http://www.bbc.co.uk/radio3/classical/index.shtml

クリスマスの、今宵、バッハを聞きながら、お過ごしください。

私ですか?アルゲリッチ&オザワの、ベートーベンの2番のDVDを借りてきたので、見て(聴いて)います

では、では、

Posted by: JohnClark | December 25, 2005 03:21 PM

追伸です。

さきほどのDVDは、ベートーベンの1番でした。誤記ですう。
m(U_U)m

先のコメントで、コメントで、「クリスマスらしい内容」とは、ポゴレリチのインタービュー記事ということであって、記事の中身にある「旧ユーゴの内戦」に関してではありません、また、サイトの趣旨に外れるために、コメントは、避けます。
が、ごめんなさい、でも、ひつだけ。
「ブコバル」については、ジャーナリスト 千田 善さんによる「ブコバルに手紙は届かない」という映画の解説が、分かりやすいかも知れません。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~z-chida/vuko.html

Posted by: JohnClark | December 25, 2005 03:57 PM

いろいろと内容に関連の深い、大変参考になるお話を、どうもありがとうございました。URLの御案内も感謝致します。

何かの機会にUPしたいと思っていましたので、自分に締め切りを設ける意味でも、クリスマスの日にしようかと決めました。イブにUPできればもっと良かったのですが~(^_^;。

ブコバルの戦渦については、日本にいると直接の情報が少なく、自分に関わりのある問題と感じる機会が(私は)少なかったのですが、このような解説を拝見すると、改めて当時のユーゴ情勢について考えさせられます。

クロアチア人とセルビア人の両親の間に生まれたイーヴォ少年は、まさに「ユーゴスラヴィア人」として育つ筈だったのですね。彼は芸術家としての活動を通して、祖国の窮状を救うため、彼なりに大変積極的に活動をしていたと思います。

Posted by: 転勤族の妻よしこ | December 27, 2005 09:18 PM

こんにちは(と、こんなところに現れてみたりする。。。)、今年も宜しくお願いします♪インタヴュー、興味深くよませて頂きました。
モネ劇場(ブリュッセル)で、大野和士さんが活躍されてますが(スカラ座やグラインドボーン音楽祭でのデビューも決まり、もう飛ぶ鳥を落とす勢い!今年7月に大フィルにも客演されるので楽しみにしてるのです。)、この方は以前ザグレブ・フィルにいらしたのですが、灯火管制が敷かれたなかで、それでも人々は命をかけて演奏会に集まってくるのだそうです。「音楽」を求める。。。という意味が、日本のような平和な国で考えるのとは、また違って響いてきますね。
ポゴさま、今年はトルコから、演奏会活動スタートのようにお見受けしますが、元気に活躍されることを願ってます。トルコ出身で、ファジル・サイという、これまた、個性的なピアニストがいますが、彼は、一年のうち半分は母国にいるように努め、恵まれない子ども達のために演奏したりしているそうです。2006年が少しでも平和に近づく一年でありますように、お互い素晴らしい演奏に出会えますように。。。

Posted by: あさがお | January 11, 2006 02:52 PM

あさがお様、インタビューをご覧下さいまして嬉しいです。ありがとうございます!
こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願い致します。

3日、マエストロの演奏会をテレビで聴かせていただきました。昨年の、私の大きな喜びのひとつは、あさがお様にマエストロ大植を教えていただいたことです。本当に感謝しております。

広島のヤマハにもマエストロのコーナーがあり、AGE of EIJIと書いてあり、「うまいんちゃう?(^_^;」と思いました。今年は是非、マエストロの実演に接する機会を得たいものです。またどうぞよろしくお願い致します。

大野和士さんがザグレブ・フィルにいらした当時、ポゴレリチの弟であるロヴロ・ポゴレリチと共演なさったことがあり、日本へも、ロヴロと組んでの来日予定がありました(何かで実現しなかった記憶がありますが)。大野さんは、限界状況の中で音楽を求める人たちを間近にごらんになったのですね・・・。

Posted by: 転妻よしこ | January 12, 2006 04:31 PM

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